老人の主張11
                   尊属殺 卑属殺

                            
        ななえせいじ
 
                                         
 日本の景気は先行きあまり明るいと言えなさそうである。円安とインフレ、コロナ禍、それに少子化と人口減、その上に超高齢化社会と来ている。インドは景気が良いそうであります。現状の日本と真逆にあります。日本のこれからが大変と危惧しております。
 その直接要因は消費不振。当然でしょう。給料が上がらないし雇用は不安定、国民は不安の内に過ごしております。日本人はもとより真面目な国民性でありますが真面目なだけにいろいろな制度に苦しめられております。
 現下の社会現象をしっかり分析して国を挙げてしっかり対応する時ではないでしょうか。政治家はもっと真面目に活動していただきたいのです。

 子は国の宝であります。子沢山を子宝に恵まれたといいます。その大切な幼い生命が奪われていくという衝撃的な事件が続きました。親がわが子を殺害する、卑属殺(ひぞくさつ)とでもいうのでしょうか(日本にはこの規定はありませんが他の国では加重犯として重い刑に処しております)
 日本には最近まで親殺しの尊属殺の規定はありました。法の下の平等に反するという視点から廃止されました。
 最近父親が暴れる息子を殴り殺したという衝撃的な事件がありました。どうにも手に負えない大人のわが子を殺害した父親の心境はどんなだったか。困り果てた父親がそうしたのにはよほどのことがあったのでしょう。現行犯逮捕された父親はあっさり罪を認め、落ち着き払ったその時の父親の姿が印象的でありました。

 子が親を殺すという尊属殺は、儒教のおしえからして倫に外れたむごい行為であります。少なくとも最近までは刑法上死刑または無期懲役の加重犯でありました。しかしこの規定は憲法14条の法の下の平等に反するとして平成7年(1995)に廃止されました。

 時は今、人生百年時代であります。おまけに少子化時代となれば老齢の親の介護に駆り出されるのは働き盛りの子供であります。傘寿や卒寿を過ぎた親ならば施設に入れる方法もありますが役職定年とか人員削減とか、早期退職を促すサラリーマン社会を取り巻く環境は厳しくなっております。これは経営者が国際競争力とか企業の成長を見越して再投資に振り分けるとかで内部留保を厚くするために賃上げは抑えがちです。早期退職を促す役職定年は体のいい人員削減策であります。このやり方ではかえって競争力を削いでいるのではないか。大企業の多くの経営者はオーナーではなくサラリーマン社長でありますからね。
 こんな環境だから親の介護を理由に早期退職する人が増えている。再就職はそう簡単でないことは分かっております。路上生活者が増えているというのもこういった社会事情があるようなのです。
 親を介護するヤングケアラー問題も深刻であります。学生の内から疲れてしまう社会の仕組って冷たすぎはしませんか。
 日本を脱出する若い労働者が増えているという現実。
 国民の生命と財産を護ると機会あるごとに総理大臣はコメントいたします。でも優しいようでちっとも優しくない。金さえ配っておけばいいとでも思っているのでしょうか。もはや国民も政治も貧困状態であります。実行性がないから支持率は上がらない。もはや自助努力も限界であります。



                 
 2022年11月20日
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