老人の主張5
                 
                 ななえせいじ
 
                      
 この夏豪雨被害に見舞われた日本列島 
 天気予報にこれほど関心を寄せたのはかつてなかった。雨が降ればその破壊力になすすべもなくやられっぱなし。初めから自然を制御できるわけがないのだ。その挙句、甚大な被害修復に多大な工事費をつかっている。その箇所が修復できたとしてもまたぞろほかの個所で被害が発生する。これが実情だ。
 他に打つ手はないのでしょうか?あると思いますよ。日頃から国であろうと個人レベルであろうと危機管理意識を持つことである。その為にはやりたいと思う不要不急のことは後回しにして安全を優先すべきです。備えあれば憂いなし、というじゃありませんか。それじゃつまらない?あなたは好きな物から先に食べる性格ですか?どっちでもいいけど並んででも手に入れたい物ってタイムイズマネーより価値がありますか?そういう感覚の日本人は結構多いのです。こういう打算と行動性こそがコロナ禍が収束しない遠因にもなっております。
 地球に住まう人間たち。自分ファーストもいいけれどまずは無駄な競争心を改めよう。例えば急いで高速道路を走るようなこと。ただでさえ車は早いのにその上どうして急ぐのですか。大事なのは日ごろから無駄な競争心を持たない方が安全だということ。例えば東大入学、余裕で入った人と死に物狂いで頑張った人とでは危機管理能力とかほかの部門で微妙な差が生じるはずです。一発勝負で勝ったとて穏やかな人生は必ずしも保証されていません。この頃頻発する大災害。その地が商売優先で再開発されたところだったとしたらその責めは業者に向けられる。受け身の消費者はその地に住まったことを運の良し悪しで考えるでしょう。私はその前に自己の管理意識のあり方がどうであったかを考えてみる。その災害にかすりもしなかった人はきっと競争心むき出しの背伸び人生を来た人との違いを感じることでしょう。日頃の心掛け次第でその人の人生は穏やかなものになるのです。タワーマン申し込みに徹夜してでもものにしたいという心理、理解できにくい。2番でもビリでもいいじゃない?その方が楽なのです。

 話変わって自己所有の山林のことです。そのことで森林組合から提案を戴きました。今年はあなたの山林地帯が整備計画に入りました、ついては同意を戴きたい、費用は国の補助で行いますからかかりませんよという。各地で起こっている豪雨を見ているといつ災害が起こらないとも限らない。思えば何十年もほったらかしたまま、災害を気に掛けておったところでした。
 日本の国土の大半は山林であります。この山林整備を怠ったがゆえに山崩れや洪水が起こり川は汚れ、海も汚染されます。山崩れの修復に掛ける国家予算は莫大であります。転ばぬ先に手を打つ、密集した立木は間伐して良い木に育て水はけを良くする。林業を生業としてきた人達の知恵は杉や檜といった針葉樹を一世代置きに楢やクヌギ、ブナといった雑木を交代で植林するそうだ。雑木は根ばりが深く保水力がいいからだという。ここで欲をかく業者はスギやヒノキを連植するらしい。私はこのことを山の業者から学んだ。
 森林組合の提案にもちろん二つ返事でお願いいたしました。それが半年前のこと。その後の豪雨災害を目の当たりにして自分のところは何もなかったことに安堵いたしました。何かいいことをしたような錯覚に捕われました。

 自分ファーストで生きることは優位の内はいいかもしれませんが兎角摩擦が生じやすい。人生は山あり谷あり、周囲に寄り添い穏やかに控えめに生きていってちょうどいいのです。ただしこれは老人の主張であります。
                             2022年8月27日  
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