老人の主張1
                 給付金詐欺事件について

                                  ななえせいじ
 
 もちろん詐欺行為は悪いに決まっております。もしそれが罪でなかったとしたら制度そのものに不備があったとしか考えられません。
 不備とは? 法は全方位的であらねばなりますまい。その法の目が粗くても「疎にして漏らさず」であらねばなりますまい。
 十億円ともいわれる大金を詐取した大胆不敵な犯人を見逃さなかったのだから法治国家の面目躍如といったところであります。
 それにしても事業持続化給付金というネーミングからして馴染みにくい。書類一つで十億円も詐取出来てしまったのだから「働いて稼ぐよりずっと楽ちん」との計算の上で犯人はこの計画を思い立ったのだろう。こういう犯意の存在を見抜けなかった行政の思考力はお粗末じゃありませんか。
 しかし一度こんな悪事に手を染めてしまったら際限もなく突き進んでしまうというのもこの頃の人間の傾向にあります。コロナを境に似たような事件が目立ちますよね。
 日本は法治国家。穴だらけであっても法は法、侮ってはいけません。「疎にして漏らさず」の法の精神を良く理解すべきであります。捕まって初めて後悔しても「運が悪かった」では済まされません。法は世の中の秩序と安寧のためにあり運試しのためにあるのではありません。
 確かに日本人の質も低下しております。これを考えた政府は罪人を出さないようにする防止策まで考えなかったようであります。この制度で助かった人は確かに大勢おられます。国民の生命と生活を護る上で良い制度に違いありませんが罪人を沢山造ってしまうデメリットも考えるべきだったとこの老人は考えます。
 犯人が捕まったことで一件落着かと思いきやまだ隠れた罪の堀おこしがこれから始まるとも聞きます。多少の悪意でこの制度を利用した人はバレなくてよかったと胸をなでおろしたとしたらまだ早い。針の上の筵状態かもしれないが相談にのる弁護士は「早めに返金したほうがいいですよ」とアドバイスします。ということはこの頃よく目にする「検察は認否を明らかにしない」で不起訴処分にするという手法。罪を憎んで人を憎まずの精神がこの種の事件の終着点になるであろうと思います。
 ともかく罪作りな制度でありました。
参考までに老子の言葉をここに書き記します。
「天網恢恢疎にして漏らさず」(てんもうかいかいそにしてもらさず)
ある解説によれば天道とは厳正なものであり悪さをすれば天罰が下る、というものです。「真面目に生きましょう」という意味であります。     
                         
          2022年7月1日
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