年寄りのたわごと あんたに言われたくない(25)
                        今年は五黄の虎

                                                   ななえせいじ
 
 今年は干支と九星の取り合わせの中で最も運気が高いといわれる五黄の虎。でも年初からいやな事件が多すぎますよね。
 医者を人質にたて籠った放火殺人事件、女子大生の共通テストカンニング事件、元彼を殺して埋めたという事件、連日のように起こる火災による死者、無謀な交通事故、その上に終息しそうにないコロナ禍。この不安な世相をどう暮らしたらいいのでしょうね。自己責任で対処するよりほかないのでしょうか。
 怯まず考えてみよう。これら社会事件にきっと生きるヒントがあるはずです。
 例えば女子大生のカンニング事件。背景に構造的な学歴社会があります。社会通念として人々の心中に横たわり無視できない存在なのです。東大医学部を目指した高校生の殺傷事件はこうした社会風潮の現れなのだと思います。有名大学に入って勝ち組になりたいとした価値観は学生の共通認識なのであります。受験地獄はいわばこうした風潮の副産物。高校3年間で人生が決まってしまう社会の仕組。これでいいのでしょうか。私は入学試験より卒業資格試験のほうが実社会に即応するのではないかと思っているのですがね。(あんたに言われたくない)
 齢80才を超しますと同級生の中から鬼籍に入っていく人が出てきます。昨年12月8日、開業医の同級生が亡くなりました。この間まで、僕には定年がない、と元気だったのに残念です。別の同級生のお医者さんは元茶道裏千家淡交会第3支部長でしたが数年前に体調不良で退任、消息は分かりません。
 どの世界も一生懸命さが理解されない理不尽な一面があります。今世相は理解不能なことばかりなのです。
 政策より政治が悪いという人がいますが、この頃の政治家を見ていると納得できる部分があるのも確かです。(あんたに言われたくない)

 急速なうねりをもって変化する世の中。そのトレンドはもはや年寄りには理解不能です。老後を生きるには才覚と智慧が必要と分かりますが降ってくる災難にどう対処したらいいのでしょうか。自分に非がないとして訴訟に持ち込み何年も争うエネルギーがありますか。棲みにくい世の中になったものです。
 君子危うきに近寄らず、心頭滅却すれば・・・の心境で行きましょうよ。
 そこで拾遺和歌集より参考に次の歌を掲げます
 かくばかり 経がたく見ゆる 世の中に うらやましくも 澄める月かな
 意味は何の悩みもないかのように澄み渡っている月であることよ
  注 藤原高光(940年~994年)は平安時代の歌人 三十六歌仙
  参考 拙著 初版「諷意茶譚」の134頁に梅逸画小堀宗中画賛の写真を掲載     
                         
                 2022年2月9日
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