年寄りのたわごと
                 あんたにいわれたくない―(15)
                         自動車は限りなく家電化していく
                                                    ななえせいじ
 
 三菱商事のDX投資の事業目的はデータ連携の強化にあることは間違いない。例えば食品ロスを減らすために食品流通の需要予測に基づいて注文から生産までを一元的に管理しようというもの。食品に限らず効率的な在庫管理は産業界が理想とする経営目標。こうした取り組みは高度なコンピューターとAIロボットとのコラボにより飛躍的に進歩しているようだ。
 世の中は日々進化しております。例えば天気予報では数か月先までの予報が可能になったし、富士山の爆発予測だってかなり確率は上がっているようです。しかしそうはいかないのが資本主義社会の経済なのです。かなり痛い経験をした人でも過去の災害は忘れてしまいがちです。資産価値が下がるのをおそれるあまり欲目に評価したいという社会通念がそれを拒むからです。例えばハザードマップ。災害確率が高い地区をデータから割り出し危険水域に指定したとしたら災害の有無に関わりなく資産価値は下がります。担保価値も下がりそこに融資した銀行の貸し付資産は不良債権と化します。その住宅は流通性をなくし売却できない上にローンだけが残ります。水害が多い昨今は自分の才覚でしっかりリスク管理することが大切であります。

 この先のデジタル化社会はこれまでの土地本位制を見直すでしょう。きっと資金調達手段は事業内容や人的資源に重点を置くようになるでしょう。
 また日本製鉄も1000億円規模のDX投資を行う予定といいます。注文から生産まで一元管理しようというのです。とにかく製鉄1トンにつき二酸化炭素2トンを排出するとされる業界は人類未踏の水素製鉄技術に挑戦しようというのです。
 いま地球上の最大の悩みは二酸化炭素排出からくる地球温暖化であります。カーボンゼロの社会にしようと世界の国々が声を挙げました。
 トヨタは水素燃料車を開発、耐久レースで試乗し走り切りました。私が利用しているガソリンスタンドは水素専用のスタンドに変わりました。間違いなく新しい時代が到来しつつあります。
 通信技術と移動技術とのコラボレーションで自動車は限りなく家電化していくとの観測があります。近い将来の夢の話。車は個人的趣味の対象として市場性を帯びていくでしょう。自分専用の車として組み立てが可能となり部品が秋葉原で売られるというのもそう遠い話ではなさそうです。そうなりますとガソリン車は骨董品としての価値でしか生き残れない。何万という部品が次第に削減されれば多くの従業員を抱える自動車部品会社は新分野へ配置換えせざるを得ないでしょう。その人たちは人手不足分野へ回すことになります。

 少々奇想天外に夢は広がります。自家用自動車は将来自家用飛行機にとって代わるかもしれないということ。人口も大幅に減少していきますから自家用飛行機がスーパーマンのように空を行き交う時代がやって来るでしょう。(あんたが考えることじゃない。そうでした)
 とにかく重厚長大型経済システムは安い資源を大量に消費する金持ち優先の存在でありました。図らずもコロナはそうとばかり言えないよと幅広く新産業の出番を作ってくれました。ワクチン開発で後れを取った我が国は過去の成功例に拘っている場合じゃないと目が覚めたようであります。もう忖度とか資本の関係を接着剤とした仲間内システムでは機能しなくなったと気づいたようであります。つまり大きいことはいいことだとした経済界の仕組みを根底から変えていく時が来たようです。例えば目障りなほど大きいビル群やマンションなどの住宅はそのメンテナンスやインフラ整備に莫大なお金が要ります。人口減と都市縮小により日々劣化していく都市資産の扱いにきっと苦慮するに違いありません。顕微鏡でしか見えないような微生物の世界がワクチン開発を機に見直されてきたのです。コロナに苦慮しているがゆえの活路は循環型産業にあります。生物多様性的持続可能な産業としてどしどし生まれてくるでありましょう。コロナ禍に経済全体が沈んでおりますがポストコロナは悲観よりも希望のほうがはるかにデカイと思いますよ。
 この現状からして方向性は見えてきました。コロナは紛れもなく経済構造の転換を示唆しております。
                         
               2021年6月11日
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