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歳在戊子　師走抄　　　　　　　　服部清人

師走ゆへ一期の夢にただ狂へ

冬芝居人間模様業深し

厚着すも気は放ちたり宇宙涯

天平の丹塗りの伽藍寒々と

悴む手本阿弥光悦渇筆す

寒漉きの紙宗達の気概知る

風花や世阿弥呟く秘すべしと

深き闇玄之又玄息白し

ダダイズム新吉に
新吉は留守と記して冬の黙

冬天に問ふてはみても無言也

道連れの息白くして聞こゆかな

自らの心と書けり息白し

流れゆく車窓前より冬の富士

冬富嶽雲隠れてもそこにあり

啄木に
一人来て暮れの駅舎に訛り聞く

息ひそめ萬物静観除夜の鐘

外は雪弥生の壷に親しみぬ

北宋画に
雪景の気韻生動凛たる畫

侘助の一輪の黙宇宙隅