日本、今は昔ばなし 
    
        ④冬季オリンピック 日本最初のメダリストは誰?
                                                    ななえせいじ

 冬季オリンピック平昌から多くの感動をいただきました。
 メダルが取れた人、そうでなかった人、それぞれでありますが、オールジャパンの活躍ぶりに素直に感動いたしました。炬燵に温まって観戦している身は選手への感謝の気持ちしかありません。中でもオリンピック直前まで不振に苦しんでいた高梨沙羅ちゃんが銅メタルを手にしたのにはファンとして素直に安堵しております。
 さて、参加するところに意義があるとしたオリンピックですが、少しばかり気になることがありました。メディアのしつこいメダル待望論であります。アナウンサーが“メダル、メダル“を連呼するのには正直辟易いたしました。この言葉をもう少し抑えてほしかった。応援のつもりがかえって贔屓のひきたおしになりはしないか、と思うのです。
 というのはメディアの習性かもしれませんが、勝者と敗者のその後の扱いが格段に違うのであります。

 平昌オリンピックは、競技とは別なところで国別であるが故の思惑が行き交いました。特に分断された朝鮮半島ならではの光景も印象付けられました。朝鮮半島がここにひとつの民族として心情を共有できたとしたならそれなりの意義があったのでありましょう。もし、この二つの国がオリンピックの場を政治的に利用したのだとしたら、スポーツマンシップに違和感が残ります。これを日本はどう見るか、未解決の拉致問題を考えますと複雑な心境になります。
 
 日本、今は昔ばなし。冬季オリンピックで日本が最初にメダルをとった人はさて誰だったでしょうか。1956年のコルティナダンペッツォオリンピックでのアルペン回転、銀メダルに輝いた猪谷千春さんであります。この種目の金メダル保持者は伝説のトニー・ザイラーであります。後に俳優になり、松竹映画「銀嶺の王者」に出演、蔵王と長野八方尾根で撮影されたこともあって日本中が湧きました。山形市がこれを機に名誉市民章を贈ったのであります。

 今オリンピックで最初に金メダルを手にしたのは羽生結弦さんであります。66年ぶりのオリンピック二連覇というのです。この翌日、今度は5百メートルスピードスケートで小平奈緒さん、三つ目の金はチームパシュート(団体追い抜き戦)で日本チーム。大会最終日には、マススタートという新種目に高木菜那さんが四つ目を取りました。メディアのフィーバーは大変でありました。
 日本選手たちの偉業に飛びついたのが安倍さんであります。金メダル一号の際、すかさずお祝いの電話を入れたり、国会が裁量労働制で揉めている最中に国民栄誉賞を授けようかと考えるあたり、政治家が最も得意とするところでありますが、本当は安倍さん焦っているのでしょうね。
 金メダルは間違いなく偉業であります。1956年の猪谷さんの日本人初の銀メダルも偉業であったはずです。でもメディアは振り返りもせずこれまで一言も触れないのです(見落としたのかな)。猪谷さんはマスコミ嫌いとか、本人が取材を拒否しているとか、なにかほかの事情が絡んでいるのか、私は不思議に思ったのです。
 猪谷さんは1931年、国後島で生まれました。島を離れたのはわずか4才、1935年9月、戦争前であります。現在86才、2009年まで国際オリンピック副会長を務め、今も実業家としてAIU保険の日本支社名誉会長にあります。今上天皇の皇太子時代のスキーの先生でもありました。

 北方領土問題でかしましい千島列島はロシアが実効支配しておりますが、元々ここにはアイヌ人が住んでおりました。江戸時代は北海道唯一の藩、松前藩と交易をしていたそうであります。松前藩が1644年、「正保御国絵図」に自分の領土であると幕府に届けているのを見ても当時から日本の方が先に実効支配していたとなりはしないか。きっと複雑な民族問題が絡んでいるのでしょう、当時からいざこざが絶えなかったそうであります。1855年、日露通商条約(下田条約)、1904年の日露戦争ポーツマス条約により不穏な状況下にもどうにか双方が鉾を治めていたようであります。ところが問題は、1941年の先の大戦であります。日ソは中立条約を結んでいたにもかかわらず、ソ連が終戦一週間前の8月8日、日本に宣戦布告してきたのであります。たった一週間でソ連は戦勝国になりました。しかも戦後処理で北海道の北半分をよこせと言ってきたそうです。これには米トルーマン大統領が反対してくれたので実現されませんでした。今の日本が北方四島返還問題で腰砕けなのはこの辺の事情も絡んでいるように見えます。旧住民が返還を声高に叫んでおりますが、なんだかむなしい遠吠えのように聞こえます。日本国民自身があまり関心を示さないのも問題であります。きっと日本はいまに経済力で凌駕する時が来るでしょう。
 いま日本は九条問題で揺れておりますが、どうあっても力で押すのでなく平和的に解決してほしいものであります。
 ここまでの話、猪谷さんと全く関係がありませんので念のため。

 ジャンプの高梨さんに話を戻します。私がファンというのには可愛いだけでなく、物言いが穏やかで心が和むのです。つまり平和な気持ちになります。
 皆さんご存知ですか?小鳥遊と書いて鷹無(たかなし)と読みます。安心して小鳥が遊んでいるさまなのであります。つまり平和の構図であります。これが変じて高梨になりました。スキージャンプの飛行姿勢はまさしく平和な象徴ではありませんか。
 学童が安心して校庭で遊べる日本(沖縄)であってほしい

                       
             2018年2月23日
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