年寄りのたわごと
             あんたにいわれたくない―同窓会にて(7)
                                                    ななえせいじ

 日本シリーズ観たかい? あっけなかったね。経済効果の面から見たらどうなの? いささか拍子抜けしちゃったね。 どういうこと?だって全試合やったほうが稼げるじゃない? 確かに、でもそこは真剣勝負。パの立場で考えてみなよ。人気のセリーグに負けたくないじゃん。あの巨人を打ちのめしたのだから、あっぱれだよ。これから先、セ・パの人気が逆転するかもよ。冗談でなく本当に! プロ野球界のニューノーマルの始まりとも思うよ。例えば? 年俸更改の在り方が変わるとか。そのこころは? 大野雄大君を挙げておきたいね。へー?どういうこと?
今日本人に求めてやまないものを彼は見せてくれたよね。あれだけの記録を残しながら、彼は FAを放棄して早々と中日残留を表明した。これあっぱれと思うし、意気に感じましたね。感動したよ。一昨シーズンは一勝もできなかった彼はその不甲斐なさを噛みしめ課題を克服した。その背後には家族への思いと球団への恩義があったみたいだよ。彼はケガで出遅れた入団当時のことを口にした。その時の恩義を忘れていなかったんだね。
 プロ野球の選手生命は短いよね。年功序列で昇進昇級する生ぬるいサラリーマン世界と違う。稼げるうちが花ってこと。でも、人それぞれだからね。義理人情に訴える部分があってもいい。ムードメーカーとか、人の悩みを聞いてくれる兄貴肌だとか、飯によく誘ってアドバイスをしてくれるよき先輩だとか、その人なりの特性があっていい。球団はそこのところを汲んで思いやり予算をつけてやるべきだと思うよ。プロ野球はもちろん営利事業、運悪くコロナと重なっちゃたからね。だからこそ心の広いところを見せてほしいよね。とにかく選手は体が資本の個人事業。今社会問題化している非正規状態は作らないでほしい。ウン?お前に言われたくない?そりゃそうだけど、ファンは敏感、声なき声は無視できない。本業に影響してくるかもよ。
 ポストコロナのプロ野球界は激変するだろうな。まず選手の心構えが変わる。バット一本の渡り鳥家業は敬遠されるだろうし、最低でも3年、サラリーマンのように出来ることなら同じ職場で終わりたい、これ共通認識としてあると思うよ、きっと。プロの目標は常に上にある。生身だからね、好不調は誰にもある。ここのところを斟酌する思いやり手当があってもいいはず。温かみのある球団、ここに信頼のチームプレーが生まれる。打率やホームラン、エラーとかの数値が上向くだろうし、改善されるはずだ。つまりこの種の事業はバランスシートだけではないということ。あんたに言われたくない。ああ、そうでした。
 誰かが言っていたな、人生は愛情や友情の獲得競争だってね。プロ野球選手においておや、ともかく大野君を見直したよ。え?あんたに言われたくない?そうでしたね、たわごとですから、気にしないでちょ!
                         
                2020年12月1日
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