日本、今は昔ばなし31
                         令和は自己責任の時代
                                                    ななえせいじ

 平成時代から令和時代へ。新しい時代をどう生きていくか、自ら考えて対処していくことが肝要であります。何かにつけて自己責任が問われる時代の始まりであります。分かりやすく言えば、自分ファーストの勝手な常識は非常識とされる社会規範が国の方針で起こりうるということであります。冗談が、悪ふざけが、そのまま罪人にされてしまうことがありうるということであります。すべてに個人責任が問われる令和の時代のはじまり。
 無難に生きていくにはどうしたらいいのでしょうか。第1は、何の疑念も持たないまま国を当てにしてはならないということです。第2は、大きいことはいいことだとした社会通念を真に受けないということです。第3は、押してもダメなら引いてもみな、とした処世術を身に付けておくということであります。
 例えば働き方改革なる法律が新年度から運用されます。一見働く人有利に見えますが、果たしてそうでしょうか。2013年4月に施行された改正労働契約法に盛り込まれた「5年ルール」は、有期から無期に転換できるはずが有期満了になる直前に雇止めされてしまう危惧が潜んでいるのであります。職場の空気に合わないとか、何かと口うるさいとか、こういう人はいらないと企業側が判断すれば業務縮小を理由に雇止め出来るというものです。
 こうした雇止めがこの法律を機に増加しているというのです。例えば、日本を代表する大手企業に13年も非正規で働いてきた女性が、無期転換を申し込みしたら解雇通告されたというのです。この人、撤回を求め現在交渉中だそうですが、収入の道を絶たれたうえでの個人の力ではまず勝ち目がないでしょう。大企業の理不尽さを追及するにはマスコミを頼る以外にない。そのマスコミも弱者救済よりニュース性を重んじるから、どこまで取り組んでくれるか当てにならない。取材しようにも、「個人のことですので・・」とか「係りがいませんので・・」とか、体よくかわされてしまうのが現実であります。
 言い分はそれぞれにあると思います。ただ言えることは、大企業ならばそれなりの品格とおもいやりで交渉の席についていただきたいのです。象と蟻ほどの圧倒的な有利な立場で雇用契約の対等性を持ち出さないでほしいのです。世の中には強いもの勝ちの社会通念がありますが、それだけに弱い立場の人たちの話だけでも聞いてほしいのです。つれない態度はイメージ悪化につながりますよ。10年以上も勤めていたのですからよしみというものがあるでしょうに。
 ここからは私の独断と偏見であります。例えばこの女性の価値観はどんなものだったのだろうと。非正規の不安定な雇用契約を十数年も甘受してきた背景は何だったのだろうと。ネームバリューと世間体に拘っていたのではないでしょうか。もしそんな心情で職業を選択していたならば、これは間違った判断と思います。賞味期限は人間にもあります。正規社員ですと定年制度に守られ能力が劣化していても雇用は維持されます。一見矛盾ですが、これは機械でいうところの遊びの部分であり、人事の上で必要悪なのであります。
 蟻の世界でも働き蟻とそうでない蟻の住み分けがあるそうです。良く働く蟻とそうでない蟻は大体2対2、残りの6は普通の蟻だそうです。そこで働きの悪い2を取り除きますと、又新たに2の働きの悪いのが生じるというのです。これ実験で証明されているそうであります。つまり人間も同じようなもので、朱に交われば赤くなるというものです。
 労働の価値観が大きく変化しております。こんな話もあります。
 大学の非常勤講師だって生活が維持できなくて惨めな思いをしているのだそうです。大学もビジネスでありますから少子高齢化社会に予算と人員は限られ、教授になれたらよし、そうでなかったら落ちこぼれるという構図、今日ではどの業界にもありふれている現象です。早めに自分の能力に見切りをつけ、汚れ仕事でも何でもいいから生きる算段をすることが先決であります。押してもダメなら引いてもみな。同級生や親戚にいい恰好しいすることはありませんよ。正味の自分で地のままで正直に生きていくことであります。必ず転機がきます。神様が見てくれています。天知る、地知る、われ知るであります。
 先ごろの内閣府の調査によりますと、40歳から64歳までの働き盛りの「ひきこもり」が61万人もいるというのです。そのうち90%が男だそうです。
 高学歴のプライドが自分ファーストの職業観に捕らわれ結果無業の状態にしている。こうした無意欲感覚はバブル崩壊から就職氷河期への移行の過程で生まれたといいます。バブル景気時代に親の甘やかしによって気ぐらいを高くしているこの子らに責任はない、とも思えます。こういう子はとりあえず親に頼って生きていく道を選び、その結果が無気力な人間になっているのです。この状況を8050問題というそうです。かつてのニートの「孤立無業者」を今はスネップというのだそうで、しかも問題の深刻化は速まり東大の玄田教授は30才以上で増加しているとし7040問題ととらえておられます。政府の何らかの支援の手が待たれる最悪な状況なのです。
 かくいうせいじさんはどんな人生だったのですか? 趣味の茶の湯と少しの働きでなんとか人並みに過ごしています。苦労は買ってでもせよといいますが、若い時の家庭環境から生まれた我慢生活が神様の目にとまったのか、このごく些細な幸せ感は神さまがくれたご褒美と感謝しております。
 サラリーマン人生は長くて谷あり山ありであります。貴景勝が大関昇進の口上でいい見本を見せてくれました。「常に感謝の気持ちと思いやりを忘れないで精進してきました」と。
                                            2019年4月5日
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