日本、今は昔ばなし23
                         さようなら平成時代
                                                    ななえせいじ

 天皇陛下は85歳の誕生日に「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに安堵した」との心情を率直にお述べになられました。チコちゃんふうに、今こそ日本国民に云いたい。陛下のお言葉を深く心に刻んでおくべきであると。
 天皇が先の大戦による犠牲や災害の被災者に寄せる思いを口にされた時、声を詰まらせられた。災害見舞に各地の被災地を訪れておられることは国民のよく知るところでありますが、初めての被災地慰問は昭和天皇の名代としての伊勢湾台風の時であった(伊勢湾台風については№5)、とも語られた。
 戦後は70有余年、あの伊勢湾台風からでも60年、戦争も災害も忘れたころにやってくる、平成天皇としての30年間、常にこの2大変事に心しておられる心情が常々お言葉に表れておりました。「戦争のない時代として終わろうとしていることに安堵しています」というお言葉に凝縮しているように感じました。

 虚堂智愚(きどうちぐ)の虚堂録に収録されている言葉に「看看臘月尽」(みよみよろうげつつく)というのがあります。
 臘月は12月の異名でありますが、単なる12月ではなく、終わり、おしまい、最後、締めくくりなどなどの意味合いを以って広く解釈されております。看看はしっかり看よということで、この言葉は、あっという間に一生が、あるいは一年が、あるいは物事終わってしまうよ、とした警句なのであります。チコちゃん風に表現いたしますと「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と。
 まさしく天皇陛下のお言葉は、新しい時代に向けて発せられたものと解釈いたします。特に「苦難の道」と表現された戦争への思いがあつかったように思います。

 師走18日、尾州久田流のお茶席に「臘八之歌」と題した日野資枝筆の軸が掛かりました。臘八とは12月8日のこと。もちろん旧暦でありますので新暦に置き換えますと1月の下旬になるでしょう。ほかでもない、太平洋戦争勃発の日は12月8日であります。もちろん新暦であります。この日、日本は真珠湾に奇襲攻撃をかけたのであります。
 また、この日はお釈迦様が悟りを開いた日でもあります。この日を成道会(じょうどうえ)といって、菩提樹の下で瞑想を続けていたお釈迦さまが明けの明星の輝くころ悟りを開かれたのだそうです。忍辱、自戒、持撓、布施、禅定、智慧の苦行を修験したことで会得した悟りの境地。凡人の私にはその境地がどんなものか分かりませんが、凡人は凡人らしく簡潔明瞭に、悟りとは「差を取る」ことと解釈しております。ところが現実の世の中は、「差をつけること」ばかりであります。特に今年は災害が多く苦難の避難所生活を余儀なくされている被災者は「差がつくばかりの困窮生活」を強いられております。
 お釈迦さまは、四諦、八正道の修行を積むことによって煩悩が無くなり、結果として苦を克服することが出来る、と説いておられるようでありますが、現実は「苦しきことのみ多かりき」であります。恩着せがましくポイント還元だの、実感が伴わない貧弱な政治手法はやってほしくありません。雀の涙ほどの賃上げでは足りませんし、もう少し大粒な涙にしてほしいのです。何よりもまず普通に健康が保て、無理なく働ける仕事がほしいのです。国民の多くが蝋燭の火が尽きるような「看看蝋燭尽」であってはならないと思うのです。
 それにつけても日本経済、株価が動き「看看株価尽」の様相を帯びてまいりました。不安な年の瀬であります。

 日本、今は昔ばなし。ここで平成時代を振り返っておきましょう。
  元年 4月 消費税3%導入
  3年 1月 湾岸戦争勃発
  同年12月 ソ連崩壊
  7年 3月 地下鉄サリン事件
  9年 4月 消費税5%引き上げ
 12年 9月 東海集中豪雨
 13年 9月 アメリカ同時多発テロ
 17年 3月 愛知万博開催
 23年 3月 東日本大震災発生
 24年12月 第2次安倍内閣
 26年 4月 消費税8%引き上げ
 28年 4月 熊本地震発生
 30年10月 東京築地市場閉鎖
  同年12月 東証株価暴落一時2万円割れ

                       
                 2018年12月29日
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