『I諷意茶譚 京の食文化 高橋英一氏の講演を聴く』
                                                      七重誠治

 戦国の秘話からいったん離れよう。さしずめ茶事なら中立(なかだち)というところか。
 茶道裏千家に淡交会と言う組織がある。先ごろ愛知県の3支部が合同で熱田神宮会館において「茶道文化講演会」を開いた。今年は京都南禅寺畔の老舗料亭「瓢亭」14代当主高橋英一さんが講演された。題して「京の食文化と懐石・私のこだわり」。
 高橋さんは京の伝統文化は、呉服、陶器、漆、菓子、料理の5つに大別され、京料理の歴史は4つの基礎、進歩から発展したという。
 有織料理の宮中からのもの、精進料理の寺院からのもの、懐石料理の茶道からのもの、それにおばんざいの町衆からのもの。この京料理の発展に影響を与えたのが、松前船や北前船などによる交易。北の海で獲れた塩干物、福井や若狭から運び込まれた汐もの、加えて京の伝統野菜。特に他府県から持ち込まれた野菜は京の気候、風土に適応して京独特の食材に育てられたと高橋さん。夏ものでは、賀茂茄子、伏見唐辛子、鹿ケ谷南瓜 冬ものでは聖護院かぶら、堀川ごぼう、九条葱等が有名である。こうした歴史を背景に京都府は、昭和62年、17品目、34種を伝統野菜に指定した。
 高橋さんは、京の食文化はこれにとどまらず、庖丁の文化、だしの文化があるという。特にだしは料理の決定的要素として高橋さんはこだわるそうだ。
 話の要約はほぼここまで。
 京の食を際立たせるものは日本料理と茶の湯から来る懐石。この雰囲気があるからこそ和服を際立たせる。それに京ことば。舞妓さんの京ことばがはんなりしていて、これに歴史が醸し出す時代感が加わる。
 こうして培われた古都のイメージは日本のイメージを代表し世界に発信している。
 実は食文化は京に限らない。例えば加賀(金沢)。京都と張り合って加賀野菜と銘打って対抗している。そう言えば友禅にしても加賀友禅がある。陶器では飴釉薬の大樋がある。又全国に食材に関わる市場はあるが、京の錦市場に対して金沢の近江市場。魚介類は海に近い金沢が優る気がする。お米はどうか。能登には絶景で有名な千枚棚田がある。この棚田で作られたお米がバチカンからお買い上げされた。びっくりしたのが棚田の農家。今では世界的米ブランドである。これを指導した人は本職が坊さんで東京からUターンした臨時役場職員。故郷が過疎化していく現状を見かねて農協を当てにしない産直農法をあみだした。
 このように全国を見渡せば消費者に認められたブランドは沢山ある。野菜に至っては、道の駅で個人ブランドが人気を博している。店を持たなくても通販で、客の方からお取り寄せをしてくれる。商品力が勝負の時代が来たのである。
 そこで日本が矢面に立たされているTPP問題。日本は国土からして不利である。だとしたら、品質で勝負するよりほかなかろう。TPPは怖くない、と。
                       
                  2014年9月8日
                                                     (六敬庵主人
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